診療看護師(NP)が最も習熟すべきものは何か

物事には、何でも専門性がありますので、極端な専門性はのぞいて、最も一般的に必要とされている知識は、内科学(Internal medicine)ではないでしょうか。

 

内科がわかれば、どの診療科でもある程度のプラクティスは可能です。

例えば、集中治療医になるには、麻酔や救急に上乗せされた知識が必要とされていますが、実際は内科の知識が最も必要であることは、臨床を行っている方にとっては、しっくり来るのではないでしょうか。

 

巷では、

胸腔ドレーンを何本いれました!!

中心静脈カテーテルを何本入れました!!

といった発表が多いですが、何度も繰り返しますが、「その先」を見据えた議論が必要だと思います。

 

一方、適切な内科の知識をもった、NPであれば、「〇〇の適応があるので、CVが必要、もしくはCVとPICC(末梢留置型中心静脈カテーテル)では、この患者さんには、これこれこういう理由から、必要/不必要だと思います」となるはずです。

 

よく、縦と横の診療と言われるものがあります。

横とは、横並びにバーっと検査を片っ端から提出し、その検査の結果を吟味するやり方です。

3次救急や、循環器など、時間が切迫している診療科で多いと言われています。

 

このやり方の問題点は、検査の特性を考慮していないことです。

例えば、D-dimerが上昇していたらどうするのか?というところまで考えていない、つまり先手を読まないと、後々苦労します。

 

一方、縦の診療とは、検査前確率がこの程度あるので、この検査を行って陽性となった場合の検査後確率はこの程度なので、この検査を提出します、ということです。

 

どちらが正しいかと言われれば、その時々でどちらも正しいと言わざるを得ません。

しかし、時間が許すのであれば、検査前/後確率を意識したプラクティスを行うべきであると思います。

 

NPの中には、片っ端から検査を代行オーダーして、検査の結果や他の医師が読影した読影結果からしか、診断出来ない方も多いと思います。

 

一方、キチンと診療しているNPは、問診や身体診察を大事にします。

つまり、検査のオーダーなど必要ないのです。

もちろん、現代の医学において、検査に頼らない診断はあまりありませんが、基本的な軸を持った看護師だからこそ、検査以外の実践で医師より秀でた知識や技術を実践すべきだと思います。

 

例えば、肺炎の診断を行うとします。

主訴、熱・咳・低酸素血症。

 

あるNPは、胸部CTと片っ端から血液検査をオーダー。

 

あるNPは、丁寧な病歴と身体診察より、肺炎の可能性が高いこと(ほとんど肺炎であるということ)を確信します。

さらに、痰のグラム染色より、原因微生物の推定まで行います。

その結果を医師にプレゼンし、胸部X線と、治療経過の為に必要な、血液検査のみをオーダーします。

 

結果は同じ、肺炎にたどり着くかもしれませんが、被爆や医療資源の観点から、何より思考過程を無視したプラクティスを、NPが行うということはあまり良いこととはいえません。

 

医師の下で働く以上は、医師に言われてそうしているのであれば良いのですが、それが当たり前となってしまい、しまいには私の手技はうまいですと、周囲にひけらかすような態度はどうにかしてほしいです。

そのような方々を、賢いナースは冷ややかな目で、各種学会での発表を見ています。

 

ナースの延長線上であるということは、検査機器に頼らずとも実践可能な、知識や技術をまずは身につけるべきだと思います。

CTの読影結果を見て、「肺炎です」と上級医にプレゼンすることくらい誰にでも出来ます。

 

賢いNPが増えているとは思いますが、一部の不真面目(というか本人はそれが正しいと思いこんでそれを、他者に強要する)なNPのせいで、この業界が悪く見られるのは、あまり賢い選択とは言えないのではないでしょうか。