診療看護師(NP)と特定行為看護師はどのように棲み分けるべきか

近年、診療看護師(NP)を取り巻く世界では、いくつかの団体がそれぞれ独自のアドバンスドナースを養成しようとしているようです。

そのへんは、全く詳しく無いので割愛します。

 

診療看護師(以降NPと記載します;日本版NPの事です)の問題を複雑化させているものが、「特定行為」であると思います。

特定行為とは、定められたいわゆる「医行為」の一部が、事前指示に基づき看護師の判断で可能とされているものです。

例えば、ナトリウムの管理などです。

 

けれどもこのナトリウムの管理については、以前からの疑問なのですが、どのように管理すべきなのかが謎です。

例えば、検査でナトリウムが低いということがわかります。

じゃあ、ナトリウムを補充しよう、とは通常というか、そんな事絶対にありません。

痙攣や意識障害が出ている場合は、別です。

 

何故そんな事絶対にないのかと言うと、プロセスが欠落しているからです。

プロセスとはつまり、「診断」ということになります。

ナトリウムが低いといっても、原因は様々です。

その原因を調べるためには、追加の検査が必要です。

 

例えば、偽性の低ナトリウム血症を調べるには、トリグリセリドや血糖値の測定が必要です。

他には、血清/尿中浸透圧や尿中ナトリウム排泄量やカリウム排泄量などです。

加えて、体液量の評価も行いますが、ここは極論、身体所見だけでもよいでしょう。

腋窩の乾燥などが有名です。

 

ということは、特定行為を行うには、検査のオーダーをすることが必要になります。

けれども、検査のオーダーは、特定行為には含まれていませんので、通常検査のオーダーは医師への依頼が必要になります。

医師へいちいち依頼していれば、この特定行為制度は何の意味も持ちません。

むしろ、医師が自分でやったほうが早いです。

 

加えて、慢性低ナトリウム血症は、ナトリウムの補正速度は、Rules of 6と言われ、1日に6mEq以内の上昇に留める繊細さが必要です。

ということは、検査をよりこまめにみて調整することが必要なのです。

 

ナトリウムが低い=塩分が少ない、わけではありません。

盲目的なナトリウムの負荷は、低ナトリウム血症では浸透圧性脱髄症候群という、最も遭遇したくない合併症の確率を高めることにもなります。

ですので、本来は検査のオーダーを可能とするような、文言が必要になります。

 

そもそも、検査のオーダーは医師のみしか出来ないのかどうかは知りませんが、臨床を長年やってきた経験では、医師のみにしか許されていない行為だと思っています。

 

このような特定行為を、NPとよばれる人と特定行為看護師と呼ばれる2種類の看護師が存在することになります。

けれども、2種類といっているのは、これらに関連する看護師だけであり、法的には1種類しか存在しません。

そのため、大学院を出ていようが、学位を持っていようが、NP資格認定試験に合格していようが、法律上はただの特定行為看護師なのです。

 

現在NPの活躍の場は、医師の代替としての活躍が多いと思います。

例えば、代行入力による検査や点滴・処方などのオーダーやカルテ記載などです。

加えて、医師の手技の助手や、自身が末梢留置型中心静脈カテーテル挿入などを行うことも可能です。

 

NPは、現行で認められている全ての定められた38行為が可能です。
特定行為看護師は、最大38行為〜1項目まで、様々な範囲のバリエーションを持つことになります。

 

NPはそもそも、関連団体が米国のNPを目指していますので、現行の法制度上で、そのような働き方を行っています。

一方、特定行為看護師は、看護の効率化がメインテーマですので、カテコラミンの原料や、人工呼吸器の自発呼吸トライアルなどが可能です。

 

人工呼吸の場合は、最終的に抜管はできないので、医師を呼ばなければなりませんが、自発呼吸トライアルが成功したのかどうかは、重要なファクターですので、チームとしての働き方を模索していけば、有効に活用することが可能です。

 

NPの仕事は、看護師免許でも同様なことができます。

棲み分けというよりは、看護師が責任をどこまで担う覚悟があるかということかもしれません。

 

責任は、自律への第一歩ですので、看護師がいろいろと決断し判断することで、医療を効率よく回して行く必要があります。

看護師は本来出来ることが沢山ありますが、その壁を作っているのが過去の教育です。

こんな事やっていいんだ、ではなく、やって良いことは正しい知識をみにつけて、積極的に行うべきです。

 

ただ、自分がやりたいからやるということもあります。

NPに多いです。

胸腔ドレーンを何本いれました!!

中心静脈カテーテルを何本いれました!!

というのは何の役にもたちません。

その結果、どうなったのか?ということが重要なのです。

これら、認められていない手技を自慢げに学会で発表している方がいらっしゃいますが、結局は医師の監督下に行わなければなりませんので、やはりその結果どうなったのか?が重要だと思います。

 

特定行為看護師は、10万人を目指してますが、個人的には全員に必要なスキルであると言えます。

そもそも、看護師が医師の指示受けだけによる、看護実践をする時代はもう終わりました。

今後は、主体性をもって、その先を見据えた看護師が必要になります。

中心静脈カテーテルや胸腔ドレーンを入れて喜んでいるようでは、話になりません。

たしかに、その様な手技の経験は必要だと思います。

けれども、それが仕事とは思いません。

 

今後NPと特定行為看護師が棲み分けるためには、NPの法制度化が必要だと思います。

そのためには、中心静脈カテーテルを入れましたとかいう、自己自慢ではなく、NPがいることによるメリットを提供することが必要だと思います。

 

まだ、数が少ないだけにお互い手を取り合っていきたいものです。