結論
- 手技ができる様になったからと言って,偉いわけではない
- 研修医などに横柄な態度を取るのは絶対的に間違い
- 共同している医療者は仲間であるという認識が必要
例えば,診療看護師はPICCという末梢挿入式中心静脈カテーテルの留置ができます
この行為自体は,とても有意義で医療の変革と言ってもよい事象の1つといえます
ただ,ある看護師はこの行為ができて,ある看護師はできないというと,できる看護師は偉いと勘違いしてしまいがちです
この様な横柄な態度をとる診療看護師の場合は,往々にして客観的に自分を見つめるメタ認知が不足しています.
わたしは,こんだけやっている,なんでこれが準備できていないの,という話になります
そして,できる人は侵襲的な行為だから,じゃあさらに特別な認定制度を創ろうという話になります.
これは本来,とてもよい話だと思います.
侵襲的な処置は,上手な人がやるというのが医療の鉄則です.
医者だから中心静脈カテーテルの挿入ができないといけない,わけではありません.
特に病院の場合は,沢山の医療従事者がいますので,得意な人がその処置を行えればなんの問題もありません.
ただ問題になるのは,医療全体を見据えていないということです.
たとえば,特定の人しかPICCの留置ができない場合誰が困るかと言うと,戦略が甘ければ双方にとってデメリットしかなくなってしまう可能性があります
たとえば,認定者が少ない場合,養成件数が多くなるほど対応が困難になります
特に集中治療室では,採血や点滴を目的としたルート確保がPICCで行われます
話はそれますが,PICCの利点はCVP(中心静脈圧)をモニタリングできること
加えて,高濃度の中心静脈栄養などが投与できること
さらに中心静脈血酸素飽和度が測定できる
1本のルートで,2つや3つのルートが使える事など,様々な利点があります
当然副作用もあり,血栓や感染がその代表です.
すなわち,重症患者さんになるほど,PICCの入れ替えは頻繁に行われる傾向にあります.
そのたびに,PICCを挿入を認定された人に連絡をして留置してもらうことになります.
加えて,PICCを留置できる人は集中治療の専門家ではありません.
一般的に,集中治療室での侵襲的処置は慣れた人が行うべきとされています.
限られた資源を有効に活かすためには,損益計算と同じく需給バランスを見据えることが重要です.
例えば,PICCの需要と供給が釣り合う場合は,それでよいのですが,需要過多になる場合は大きな問題です.
さらに集中治療室の患者さんは,急ぐ場合が多いです.
いま,病棟の人対応しているので後にしてください,ということが通用しない場合が多い訳です.
けれども集中治療の専門家ではない人たちがこの様な制度を創ってしまうと,双方に問題が生じます.
PICCを留置してくれるのはとてもありがたいのです.
ただ,多くの人は「そこ」にアイデンティティを見いだせないのも事実です.
PICCが好きな人は,「そこ」にアイデンティティを見出しています.
そのへんの乖離もあります.
まとめると,PICCを留置できる人は偉いというその認識を見直すべきです
そして,準備や片づけはある程度できるようになりましょう.
偉そうに,準備ができていない,片付けよろしく,では良くないような気がしています.