インフルエンザに思う、医療者のパターン認識

この時期になると、毎年いろいろな意味でインフルエンザに悩まされます。

 

患者さん、医療スタッフ、患者さんを取り巻く周囲の人などでしょうか。

患者さんを取り巻く周囲の人は、例えば教師であったり、患者を管理する立場にある人であったり、両親であったり、だと思います。

 

病院には、一般的にプロフェッショナリズムを持って働く集団であると思います。

けれども、実際は一般の患者さんが考えている事を、そのまま臨床現場にアプライしている医療者もいます。

 

例えば、事務職の方から、「普段の平熱が35度で36度なので、インフルエンザの検査どうしますか?」とか。

確かに、インフルエンザを疑うということは、非常に素晴らしいのですが、インフルエンザにたどり着くまでの、ロジックに疑問を持つことが多いです。

 

ここでは、事務職の方を例にあげましたが、医師も同様です。

発熱=インフルエンザ迅速検査、のスパイラルに陥ってしまうことは、よくあることだと思います。

そして、根拠に乏しい新しい抗インフルエンザ薬を、多数処方することになります

 

これは、患者さん側にも問題があるのですが、インフルエンザにたいして、抗インフルエンザ薬を使用しないという選択は、現在の臨床現場では、一般的ではないと言わざるを得ません。

 

それほどまでに、患者さんは、インフルエンザと診断してほしいために、そして、抗インフルエンザ薬をもらいたいために、病院を受診することとなります。

 

ゾフルーザ®という薬は、体重で使用量は異なりますが、20mg2錠という一般的な使用量で、約5000円かかります。

そして、インフルエンザ迅速検査を行うと、約1500円かかります。

 

インフルエンザ迅速検査ありきになっている場合が、普通の病院では多いのですが、この検査は、CDC(米国疾病予防管理センター)のレポートをみますと、感度は50−70%と言われています。

 

60%の感度ということは、コイントスよりは精度があがるものの、それに近いものであるという認識が必要です。

 

どこにでも書いてあることですが、検査は事前確率により規定されます。

事前確率が低いのに、検査をしても”なにも”有益な情報は与えてくれません。

そればかりか、検査をすることで、知らなくても良い情報を知ることにもなります。

 

例えば、ホントは肺炎の人に、インフルエンザ迅速検査が陽性だったので、インフルエンザの治療を行うということは、イコール何も考えていないということになります。

つまり、思考停止ということです。

この症例では、インフルエンザ後の肺炎の治療が抜け落ちているということになります。

さらには、抗インフルエンザ薬による副作用の可能性もあります。

 

そもそも、インフルエンザの診断は、検査ではなく、”医師が行う”ものです。

 

本来、インフルエンザは人に移さないことも重要ですが、現在行われている、迅速検査と、抗インフルエンザ薬による治療は、多くの人にとって不要と言われています。

 

これほどまでに、検査依存しているのであれば、OTC薬として、薬局に迅速検査を、妊娠検査薬のように用意すればよいのだと思います。

とはいえ、嘘のインフルエンザ陽性を持参する人もでてくるでしょうね。

 

色んな人が、インフルエンザに対しては、疑義を唱えていますが、なかなかこの闇は深いものだと思います。

答えを見つけ出すのは、難しいですが、医療の質を落とさずに、医療費の削減をおこなうにはどうすればよいか、結局は政策誘導しかないのかもしれません。

 

実際、自分自身がインフルエンザにかかれば、少しでも効くのであれば、飲んでみようかなーと思うかもしれないですし。。。