特定行為と看護の代表者

看護職には現在、「特定行為」というものがあります。
この特定行為は、過去看護師の判断では行えなかった、38の行為が法的妥当性をもち、可能となったものです。
 
この制度の背景には、多数の歓迎とともに、反対意見もあると思われます。
医療は医師のみで成立するものではなく、多職種の協働があって初めて成立します。
たとえは、薬剤師や放射線技師や臨床工学技士(他多数の職種)に代表される職種と協働することとなります。
 
これが協働できないと、例えば、ADL全介助の方の呼吸状態が不安定となったとき、ポータブルX線と言われる移動式のレントゲン撮影を行うのが一般的だとおもいます。
けれども、協働できない方の場合「降りてこれないんですか」「降りてきてください」と言って、ベッドごと2名以上のスタッフの手を介し、レントゲンを撮りにいく羽目になります。
 
架空の症例ですが、レントゲン撮影を行うという行為に対して、どちらが生産性が高いかという判断ができない場合は、このような架空の放射線技師の発言を平気で言えるようになります。
 
一方、最近のニュースをみて、ナースも同じく感じるものがありました。
1つは、”「医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフト/シェアの推進に関する検討会」(座長:永井良三・自治医科大学学長)”という会議のなかで、診療放射線技師臨床検査技師、臨床工学技士の3職種に対し、業務移管が可能な22項目を提示されたようです。
どうやらその中で、「静脈路確保」については、看護師からの反対意見があったようです。
 
医療現場においては、「静脈路確保」はとてもポピュラーな処置となります。
その一方で、血流感染や神経損傷などの重篤な合併症の可能性もあり、実際にある一定の確率で過誤が報告されています。
 
実際に看護師の代表の方が、どのような発言をされたのか引用します。
日本看護協会副会長の齋藤訓子氏は、「診療放射線技師による静脈路確保は想定しにくい。現時点では拡大するのではなく、ナースに任せる方が現実味はある」と主張。岩手医科大学看護学部特任教授の秋山智弥氏は、「採血と静脈路の確保は違う。熟練したナースがやっているのを、短い研修でやれるとは考えていない」と反対意見を述べた。 
 日本医師会女性医師支援センター長の今村聡氏は、「研修は相当慎重で丁寧なものをやる必要がある」とした上で、「看護師は静脈路確保ができるが、今まで以上に看護師に頑張ってもらうとなると、現場の看護師の負荷になるのではないか」と指摘した。” 引用終わり
 
普通に考えて、看護師の負担は増えるし、そもそも看護師がどの程度のスキルを持ち合わせているのかというと、筆者が見てきた数百人程度の看護師の静脈路確保のスキル向上の裏側には、数多くの失敗があるということです。
 
通常、「失敗」とは個人的には前向きに捉えますが、ここで用いる「失敗」とは決して前向きな失敗ではありません。
看護師の静脈路確保をみていると、ある意味たまたまなんじゃないか、と思われる手技の方がほとんどです。
 
昨今は例えば、Youtubeなどの動画サイトでも、お手本とされる静脈路確保の動画を閲覧することは、誰にでもできますがそのような科学的裏付けを無視して、自分の経験だけを頼りに、先に引用した看護師の方々は自分の意見を主張されている気がしてなりません。
 
もちろん会議には、全会一致は良くないとされています。
そういった観点から、看護の代表者が発言をされたのかもしれません。
けれども、普通に考えたらわかるように、自分たちの保身のためだけに、多忙な医療現場を更に多忙にしているような気がします。
 
何をどう思考したらそのようなロジックになるのかわかりません。
 
過去、看護師は「特定行為」が可能となりました。
これは、多職種の賛同があってのものです。
 
看護師はよくて、他職種はダメというのは、他職種を冒涜している行為にしか筆者には映りませんでした。
とても、残念です。
 
さらに、第 19 回「救 急・災害医療提供体 制等の在り方に関す る検討会」というものが開催されたようです。
これは、過去病院内での活動を制限されていた、救急救命士の方が院内で活躍できるよう、法整備をすすめるにあたっての会議のようです。
 
ここでも看護師は、反対の姿勢を表明しています。
2020年2月15日の看護協会ニュースより以下引用します。
日本看護協会からは、井本寛子常任理事が構成員として参加した。本会は、救急救命士医療機関内で救急救命処置を行う案について、患者安全・国民の命を守る観点から反対の姿勢を示している” 引用おわり
 
ここでも、同様に、「看護師はできて看護師以外はできない」と表明されているように映りました。
看護師って、そんなにすごいのでしょうか。
もちろん一部の看護師は優れたスキルや経験を兼ね備えている方もいらっしゃいます。
 
けれども、それは他職種も同様です。
 
このような、他職種を卑下するような、看護の団体に未来はあるのでしょうか。
もう少し仲良く、寄り添う姿勢をがあっても良いような気がします。
 
ドラッカーは、「仲良くするのではない、仕事ぶりが重要なのだ」とたしか言っていました。
仲良くと書きましたけど、医療全体を俯瞰して、多職種協働ができるような、制度構築に少しでよいので、看護の代表者には貢献してほしいと思います。
 
どこを見なけれならないのか、見るべきは患者である、という原則を常に心に秘め、これからも精進して行きたいと思った次第です。