以前、書いたパブリックコメント

保健師助産師看護師法第三十七条の二第二項第一号に規定する特定行為及び同項第四号に規定する特定行為研修に関する省令案(仮称)についてのパブリックコメント募集に関して

 
本邦において,日本版Nurse Practiitoner(NP) に関連した議論が現実味を帯びてきていることに関して,非常に関心を持って議論の行く末を拝見しております。
当該内容に関する文章を拝見いたしました。
 
全体的に,賛成に値する内容です。具体的内容というよりは,比較的曖昧な記載ですので,実際の特定行為区分に関する具体的内容に関しては,各研修指定施設に応じた内容となることが期待されます。そのため,臨床で特定行為研修を受ける者にとってある程度フレキシブルな内容であり,一般化可能であると考えます。しかしながら,曖昧な表現法も随所にみられ,関心のない医療者がこの内容を拝見した際に,先の「チーム医療推進に関する検討会」の如く根強い反対意見が現れることも危惧されます。例えば,感染に係る薬剤投与関連では「感染兆候がある者に対する薬剤の臨時の投与」とされており,この内容であれば,一般の医師と変わらない「処方権」を持った特定行為研修が可能となるものと思われます。感染症に関して早期の抗菌薬投与が死亡率を改善させることは,Surviving Sepsis Campaign Guidelinesにおいても,重要な点であります。しかし,世界的にみても,不適切な抗菌薬管理が耐性菌を産み出し,非常に問題となっているのも事実です。このように,相対する意見を鑑みての記載であるものと理解しております。よって,特定行為を行う者はある程度の標準的な教育及び,認定(国家)資格により,その質を保証するものでなければならないと感じております。実際の臨床では,医学的に豊富な知識と経験を持った医師が多数存在しておりますが,現行の医療制度上では,専門分化される傾向にあります。つまり。医師の「強み」と「弱み」は得てして必然です。この弱みの部分を,特定行為を行うものでカバー可能な部分は補わなければならないわけです。このように,現場の特定行為を行う者にとって自ら限界を定めることが可能である反面,どこまでの処置を担えば良いのかもこの一文をもってしては,推し量ることはできません。
次に,手順書に関してですが,各指定施設で手順書を作成し,指定研修が行われるものと思われます。医療においてしばし強調される部分として,「一般化」があります。指定研修を終えたものが,他施設でも同様の医療の提供が可能となるべく,手順書に関しても各施設であまりにも幅がある内容であってはならないものと考えます。
次に,指定研修を受ける者に関してです。現在大学院やその他の研修機関を修了し,試行事業として特定行為を行っているものと思われます。しかし,この2つの研修機関(大学院とその他)を比較した際に,大学院とその他の研修機関を経たものでは,研修時間自体も大きな差が生じることとなっています。さらに,今回の指定研修機関で特定行為を一般の看護師が行ったとして,その質を保証可能なものか甚だ疑問です。資質の向上とは,少なくとも臨床とは間をおいた研修で担われるべきです。医学教育は一般の大学と比較し長期である事などを鑑みれば,医学教育を受けてこなかった看護師にとって,医学(特定行為)を学ぶということは,少なくとも大学院のような養成機関で行われるべきであると思われます。米国のNPが博士課程修了者をNPの条件として目指していることからも,先人に倣う態度が必要なのではないかと思います。平成27年4月1日から,特定行為研修を一般の看護師が受けたとして,現在の看護師の医学的知識の平均を推察する限りでは,非常に危惧を感じます。なぜこのように急激に特定行為が可能な看護師を増やすことを,喫緊の課題のごとく設定しているのか不明です。また,政策誘導の観点から診療報酬についても考えるべきであると思いますが,急激に特定行為可能な看護師を増やすことは,やはり得策とは思えません。
最後に,少なくとも,このような制度を検討しているということは,評価に値するものです。医療の効率化の結果,患者さんに良質な医療の提供がなされることを願ってやみません。最終的には米国で良好な結果が多数創出されているように,今後NPの導入を検討するべきであると思います。
 
以上です。